自分の手で新しい何かを創造する仕事がしたい。このような思いを抱いて、せっかく美容師免許を取得したにもかかわらず、美容師になる道を捨ててヘアメイクの世界に飛び込んだのは二〇代のとき。以来、四〇年間、私は会社にも事務所にも所属しないフリーランスのヘアメイクとして、自身の力だけを頼りに映像の世界を生きてきました。テレビドラマや映画のヘアメイクの仕事は、現場に入れば一瞬たりとも気の抜けない緊張感を強いられる、肉体的にも精神的にも厳しい仕事。何よりも、画面の中で常に美しく、若くありたい俳優たちの要望に応えていくのは、並大抵のことではありません。シミやシワを消してほしい、顔のたるみを何とかしてほしいなどの希望を叶えるのはもちろん、役柄に合わせたヘアメイクを考え、俳優や監督の考えるイメージどおりの「人間」に仕上げていくことが求められます。